部下との1on1で、気づけば自分ばかり話していた。
そんな経験はないでしょうか。
部下が悩みを話すと、上司は経験があるぶん答えが見えます。
「自分ならこうする」「昔はこうだった」と助けたくなるのは自然です。
ただ、1on1の目的が部下の成長や主体性を高めることなら、毎回上司が答えを出すことが最善とは限りません。
上司が話すほど、部下が考える時間は減ります。
必要なのは、何も助言しないことではなく、「どこまで本人に考えてもらい、どこから自分の経験を渡すか」を意識することです。
良いアドバイスほど、早すぎると考える余地を奪う
上司の経験が役立つことはあります。
ただ、その答えが今の状況にも合うとは限りません。
部下が話し終える前に解決策を提示すると、事情を十分に聞けないだけでなく、本人が「どう考えればそこにたどり着くか」を整理する時間もなくなります。
毎回この形が続くと、部下は困ったら上司へ持っていけば答えが出ると学習します。
上司は「なぜ自分で考えないのか」と感じますが、その習慣を作っているのが自分の速すぎる助言である場合もあります。
- 答えが分かっても一度待つ
- 本人がどこまで考えたかを先に聞く
最初の10分は「状況説明」より本人のテーマを聞く
1on1が報告会になると、案件の進捗だけで時間が終わります。
もちろん必要な報告はありますが、それは通常の業務会話でもできます。
1on1ではまず「今日は何について話せると一番役に立つ?」と本人にテーマを選んでもらいます。
テーマが曖昧なら「最近、やりにくいと感じていることはある?」「今、一番判断に迷っていることは?」と聞きます。
上司が議題を全部用意するのではなく、本人が持ち込む余白を作ることが重要です。
「何を話してもいい」と言われると、かえって迷う人もいます。
その場合は「仕事で困っていること、今後やりたいこと、私への要望なら、どれから話そうか」と選択肢を渡します。
私生活や感情を話すよう求めず、本人が扱いたい範囲を尊重します。
- 本人に今日のテーマを一つ選んでもらう
- 進捗確認だけで時間を使い切らない
質問はたくさんするより「一段深く」聞く
コーチングを意識して質問を増やしすぎると、今度は尋問のようになります。
「なぜ?」「他には?」「どうしたい?」と次々聞かれると、部下も正解を探し始めます。
一つの答えに対して少しだけ深く聞くほうが自然です。
「それが一番気になるのはなぜ?」「もしその制約がなかったらどうしたい?」など、本人の判断軸が見える質問を一つ置きます。
質問の数ではなく、考える深さを増やすイメージです。
例えば部下が「他部署の返事が遅くて困る」と言ったら、すぐ催促の仕方を教える前に「今いちばん困るのは、期限が読めないこと、それとも返事を頼みにくいこと?」と聞いてみます。
同じ相談でも、必要なのが調整なのか関係づくりなのかで、支援は変わります。
- 質問を連射しない
- 本人の価値判断が見える問いを一つ置く
沈黙を急いで埋めず、考える時間を残す
質問したあと、部下が黙ると上司は不安になります。
「聞き方が悪かったかな」と思い、すぐ補足したり、自分で答えたりしがちです。
しかし考えている沈黙と、困っている沈黙は同じではありません。
数秒待ったことで、本人が考えを言葉にできる場合もあります。
ただし、沈黙は必ずしも考えている証拠ではありません。
話しにくい、質問の意味が分からないなどの可能性もあります。
時間の長さを測るより、相手が話せる状態かを確かめましょう。
また、沈黙が長くなったときは「急がなくて大丈夫」と一言だけ伝えると、相手は答えを急がされていないと分かります。
上司が待てる空気を作ることで、部下も自分の言葉で考えを整理しやすくなります。
待つ時間を機械的なルールにする必要はありません。
「考える時間が欲しい? それとも一緒に選択肢を整理しようか」と聞いてもよいでしょう。
黙っているから主体性がないと評価せず、質問が分かりにくかった可能性も考えます。
- 質問した直後に答えを補わない
- 相手が考えている間は数秒待つ
アドバイスの前に「一つ意見を伝えてもいい?」と確認する
もちろん、上司の経験が役立つ場面はたくさんあります。
大切なのは、助言するタイミングです。
本人が考えを出したあとに「僕の経験から一つ意見を言ってもいい?」と確認してから話します。
上司の言葉は、断りにくい指示として受け取られることもあります。
実際に守ってほしい指示と、参考にしてほしい案を分けて伝えます。
また、「自分ならこうする。
ただ、あなたの状況では違うかもしれない」と前置きすれば、本人が自分の判断を残したまま参考にできます。
一方で、本人が知らない情報や上司にしか決められない条件は、質問で引き出そうとせずに伝えます。
期限が迫る対応など、明確な指示が必要な場面もあります。
「ここは私が判断する。
次に同じことが起きたときの考え方は後で一緒に整理しよう」と役割を分けます。
- 本人の考えを先に聞く
- 経験談は答えではなく選択肢として渡す
最後は上司ではなく、本人に次の行動を決めてもらう
1on1の最後に上司が「じゃあ次はこれをやって」と決めると、結局いつもの指示型に戻ります。
最後は「話してみて、次に何をやる?」と本人に言葉にしてもらいます。
行動は大きくなくて構いません。
「関係者一人に確認する」「資料の構成だけ作る」「来週までに選択肢を二つ考える」など、本人が実行できる具体的な一歩にします。
自分で決めた行動なら、次回の1on1も報告ではなく振り返りから始められます。
1on1の質を高めるには、上司側も毎回一つだけ振り返ると効果的です。
「今日は自分が何割話したか」「部下が自分で決めたことはあったか」を終わった直後に確認すると、次回の改善点が見えます。
次の行動を決める際には、上司側の宿題も確認します。
「私は関係部署へ説明する。
あなたは確認したい点をまとめる」と分ければ、部下だけに解決を背負わせずに済みます。
本人の主体性を尊重することと、上司が支援の責任を持つことは両立できます。
- 次の一歩を本人の言葉で決める
- 次回は結果より、考え方も振り返る
まとめ
1on1で上司が話しすぎるのは、部下に関心がないからではありません。
むしろ助けたい気持ちが強いからこそ起こります。
ただ、成長を支援したいなら、自分が答えを出す時間より、部下が考える時間を意識して確保する必要があります。
次の1on1では、一つだけ実験してみてください。
部下が悩みを話したとき、すぐアドバイスせず「あなた自身はどうしたいと思ってる?」と聞いて、五秒待つ。
それだけでも、これまでとは違う答えが返ってくるかもしれません。


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